コンセプト
進化するTRPGとは
TRPGを遊ぶことによって、そのTRPG自体が進化・発展していく仕組みを目指す。
進化の対象はゲームシステムだけに限定しない。
- システム
- シナリオ
- 世界・設定
- GMの実践・ガイド
- プレイスタイル
など、TRPGを構成するさまざまな要素が、実際のプレイ経験を通じて発展していくことを想定する。
エージェントによる開発・支援も想定するが、エージェントそのものが進化の核心ではない。 核心は「遊んだ経験からTRPGそのものが進化していく仕組み」であり、エージェントは後から支援役として追加できる。
人間の役割
現時点で想定している主な役割。
- システム作成者
- シナリオ作成者
- GM
- PL
将来的には、世界・設定の管理者など、役割を追加する可能性がある。
重要な考え方として、進化候補を正式に採用する判断は人間が行う。
まずは人間がセッションやログを見て、何が進化候補になり得るかを発見する。
エージェントによる自動発見・分析は将来的な支援機能として考える。
進化ループ
基本的な進化ループは以下。
セッション
↓
経験・ログを蓄積
↓
人間が発見・分析
↓
進化候補として蓄積
↓
必要に応じて複数セッションを横断して評価
↓
人間が採用判断
↓
システム/シナリオ/世界設定/GMガイド等を改訂
↓
次のセッション
↓
さらに経験が蓄積重要なのは、進化候補を自動的に正式採用しないこと。
ルールの場合
進化候補を、
- 基本・コアルール
- オプションルール
- シナリオ固有ルール
- 却下
などに人間が判断する。
シナリオの場合
進化候補を、
- 正式な分岐
- 別ルート
- シナリオ固有要素
- 却下
などに人間が判断する。
同様の考え方を世界設定、GMガイド、プレイスタイル等にも適用する。
セッションログの方針
セッションログは一次情報として重要視する。
基本方針:
セッションログは、人間が自然に読める完全なログを一次情報として残し、必要に応じて後から構造化メタデータを付与する。
例:
[GM]
村の入口に到着した。
[PL]
村には入らず、裏手の森を調べます。
[GM]
森を調べると、古い足跡を発見した。必要に応じて後から、
PL行動:
type: scenario_deviation
intended: 村へ入る
actual: 森を調査
GM裁定:
type: ad_hoc_rulingなどの構造化情報を付与する。
最初から完全な構造化ログを要求すると、自然なプレイを阻害したり、ログ記録の負担が増える可能性がある。
そのため、まず完全な自然言語ログを保存し、分析・構造化は後段で行う。
進化候補は「問題」だけではない
セッションから拾う進化候補は、問題や失敗に限定しない。
TRPGをより面白く・自然に・豊かにする可能性のあるものを広く扱う。
想定する例:
- 問題
- ルールが分かりにくく、GMが毎回補足した
- 改善
- 処理を簡略化するとテンポがよかった
- 発見
- 想定外の行動から面白い遊び方が生まれた
- 創発
- セッション中に新しい設定・関係性が生まれた
- 逸脱
- シナリオの想定外の方向へ進んだ
- 成功
- 特定の演出・ルール・シナリオ構造が非常にうまく機能した
- 再利用
- 別のシナリオでも使えそうな展開・裁定が生まれた
「逸脱」は必ずしも問題ではない。
シナリオから外れたこと自体を記録・分析対象とし、その結果が面白い成功なのか、シナリオの不足なのか、システム上の問題なのか等を後から判断する。
進化候補の保存場所(一次・二次・三次情報)
進化候補は、特定のシステムやシナリオに直接紐付けるのではなく、独立した「知識・提案」層に置く方向を推奨。
概念構造:
一次情報
└─ セッションログ
├─ PLの発言・行動
├─ GMの応答・裁定
└─ 実際に発生した出来事
二次情報
└─ 分析・発見
├─ シナリオからの逸脱
├─ ルールの例外処理
├─ 新しく生まれた設定
├─ 面白かった展開
└─ 改善候補
三次情報
└─ 正式な進化
├─ システム改訂
├─ シナリオ改訂
├─ 世界設定追加
└─ GMガイド改訂進化候補の評価(決着)
grillingによる深掘りの結果、進化候補(二次情報)をどの段階で・どのように評価し、採用判断へ進めるかについて、以下の通り決着した。
記録主体・タイミング
GM/PLがセッション後にまず一次的に気づいて記録し、その後は誰でも追記・発見できる。事後にログを読み返した第三者(システム製作者など)が発見して記録することもあり得る。
評価対象へ進むトリガー
「複数セッションでの再発」は評価対象へ進むための必須条件ではない。発見者や採用判断者が「これは良さそうだ」と思えば、再発回数に関わらずいつでも評価対象に上げられる。再発は"汎用性がある"ことの裏付け材料の一つとして、評価時に参照する。
評価・採用判断の主体
発見・一次評価は誰でも行えるが、最終的な採用判断はシステム製作者/シナリオ製作者が行う。発見者や参加者の評価コメントは参考情報として蓄積し、最終判断は役割を持つ人が担う。
評価基準の運用方法
「面白さ」「汎用性」「プレイヤー評価」は、判断時に参照する観点として明文化するにとどめ、機械的なスコアリングは行わない。最終判断は採用判断者による自由裁定とし、判断理由を記録する。これは場・手札・プレイの発火条件や段階的な開示・習熟によるアンロックのソフトガイドと同様、「機械的な自動判定より人間の裁量を優先する」という一貫した方針に沿う。
複数セッションでの再発の検知
進化候補にカテゴリ・タグを付与しておき、同じタグの候補を一覧できるようにする。自動類似度判定のような高度な仕組みは、現時点ではスコープ外とする。
却下の扱い
採用されなかった進化候補は削除せず、却下ステータスのまま判断理由とあわせて記録を残す。同じ提案が繰り返し出たときに、過去の却下理由を踏まえて再評価できるようにする。
進化候補のデータ項目
1件の進化候補は、次の項目を持つ。
- 概要(何が起きたか)
- カテゴリ(問題/改善/発見/創発/逸脱/成功/再利用)
- 発生元セッションログへの参照(一次情報とのリンク)
- タグ(再発検知・関連候補の一覧用)
- ステータス(新規/評価中/採用/却下)
- 採用・却下の判断理由(自由記述)
正史グラフの共有ライブラリ化との関係
グラフの役割で決めた、正史グラフを共有ライブラリへ格上げする判断は、ここで定義した進化候補評価フローにそのまま乗せる。評価の仕組みを対象ごとに個別に作らず、システム・シナリオ・世界設定・GMガイド・グラフの共有ライブラリ化など、幅広い対象に同じフローを適用する。
セッション中の想定外への対応
セッションでは、PLがシナリオに存在しない行動を取ることがある。
将来的にはエージェントが、
PLの想定外行動
↓
エージェントが可能性を提示
↓
GMが選択・修正
↓
GMが結果を返す
↓
結果をセッションログに記録
↓
将来的に進化候補として分析という支援を行える。
ただし、これは進化システムそのものではない。
エージェントなしでも、
セッション
↓
ログ
↓
人間による分析
↓
進化候補という流れは成立することが重要。
具体的なカード表現(選択肢カード・「新たな選択肢を提案」カードなど)については 場・手札・プレイ を参照。
この章の設計原則
- TRPGの進化そのものがコアコンセプト。
- エージェントは進化の主体ではなく、将来的な支援役。
- セッション経験は一次情報としてできるだけ完全に保存する。
- セッションログは自然に読める形式を基本とし、構造化は後から行う。
- 進化候補は問題だけでなく、成功・発見・創発・逸脱・再利用可能なものも含める。
- 進化候補は自動的に正式採用しない。
- 最終的な進化の判断は人間が行う。
- 進化候補は独立した知識・提案層に蓄積する。
カード・デッキ・グラフに関する設計原則は カルタグラフ構想 を参照。